粉雪
『―――遅いんですけど~!』


待ちくたびれたのか隼人は、少しイラついているように見えた。



「ごめ~ん。
ケーキ食べてた。」


だけどあたしは、少しも悪びれることなく言ってやった。



『ハァ?!寝起きで?』


「悪い~?
美味しかったよ、ガトーショコラ♪」


『…なら良いけど…。
てゆーか、昼飯まだなんだけど、ちーちゃん食えるの?』


「“別腹”って言葉、知らない?」


あたしの言葉に、隼人はため息をついて肩を落とした。


街は一夜のうちに、クリスマスモードから、年越しモードに切り替わっていた。


毎年の事ながら、行動の早さには尊敬すらしてしまう。


だけど人の群れは相変わらず、浮き足立っているようにさえ見える。



『…疲れ、取れた?』


「ボチボチ?
31日までラストスパートじゃん?(笑)」


『…相変わらず、すげぇ働くな。
初詣行けねぇじゃん…。』


「何で~?
大晦日は9時で仕事終わりだし、元旦は夕方からだから、それまではフリータイムだよ?
行こうと思えば行けるじゃん。」


去年は頑張って、神社で年越しが出来た。


さすがのあたしも、それくらいは考えている。



『…何ソレ…!
聞いてないんですけど!!』


だけど隼人は、眉をひそめた。



「…言わなきゃダメだった?」


『うわっ!毎日聞いてんのに、それはないわ!』


「…好きなんだね、あたしのこと。」


隼人の煙草を抜き取り、上目遣いで聞いてみた。


キョトンとした隼人は、瞬間、噴き出したように笑う。



『あははっ!バレてた?(笑)』


「バレバレ~(笑)」



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