粉雪
―――結局、駅ビルを歩いても、お金の無いあたしは、

見てるだけで何も買わなかった。


そんなことよりも、隼人のさっきの顔の方が、気になってしまう。


目に映る全ての景色が色を失っているように見えるのはきっと、

不安だからなのだろう。




『…ちーちゃん、何も買わないの?
良いのないなら、他のトコ行く?』


「あー…、高いからやめとく。」


ディスプレイされている服は、どれも値が張っていて、

軽く携帯代が飛びそうな値段だ。


適当につけた理由に、隼人はあからさまにため息を向けた。



『…ちーちゃんてさぁ、何で俺に“買って?”とか言わないの?』


「―――ッ!」


その言葉に、瞬間、目を見開いた。


だけど伏せるようにしてあたしは、言葉を紡ぐ。



「…あたし、嫌いなんだよ。
うちの母親が、そんなんだから…。」



母親は、いつも男に甘えてばかりいる。


あたしは、そんな母親みたいにはなりたくない。




『…そっか。
じゃあ、俺がプレゼントしてやるよ!』


「…ごめん、そこまで欲しい服でもないから…!」


焦って取り繕った。


これ以上隼人に、何か貰う訳にはいかない。



『…そっか。
じゃあ、出よう?
煙草吸いたくなったし!(笑)』


気付いているのかいないのか、隼人は笑いながらきびすを返した。


早くなってしまった心臓は更に不安を煽り、まるで気持ちがついていけない。




『…まだ晩飯まで時間あるし。
どっか行きたいとこある?』


隼人の問いに、首を横に振った。



『あっ!そっか、ちーちゃん疲れてんだもんな!
俺んち行こう?
マリオカートしたくね?(笑)』


「ははっ、意味わかんない…。
いいよ、あたし、何気に自信あるし♪」


隼人の言葉で、二人して車に向かった。



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