粉雪
『―――なぁ、ちーちゃん…。』


「…え?何…?」


少し悲しげな表情で近づいてくる隼人の顔に、思わず目を逸らして聞いた。


伸びてきた手はあたしの頬を捕らえ、泳ぐ視線は嫌でもその瞳に吸い込まれてしまう。



「―――ッ!」


瞬間、あたしは目を見開いたまま、言葉を失った。


重なる唇も、頬に当てられた手も、全てが温かくて。


きっとあたしは、息さえもしていなかったんだと思う。




『…ごめんな…?』


言いながら、隼人はそのまま舌を絡めてきた。


後ろにはベッドがあり、目の前には隼人。


あたしは逃げることなんて出来ない。


絡まる舌が生暖かくて、戸惑いと不安の狭間であたしの思考回路は停止していた。


その悲しそうな顔も、こんなことも、不安でしかない。




♪~♪~♪

『―――ッ!』



引き裂くように突然鳴ったのは、隼人の仕事用の電話だった。


あたしから離れ、隼人は何も言わずに立ち上がった。



「…何で…?」


見上げた隼人の顔は、やっぱり悲しそうで。



『…ちーちゃん、さっきの罰ゲーム覚えてる?
何も聞かないし、何も言わないで。
それだけで良いから…。
俺の言うこと聞いといて?』


「―――ッ!」



…そんなの、卑怯すぎるよ…!


だけど隼人は、目を逸らすように携帯を取り出した。




―ピッ…

『―――はい、見つかりました?
わかりました。
ありがとうございます。
後のことお願いします。』


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