粉雪
『…俺も、ちーちゃんのこと好きだよ…?』


「―――ッ!」


優しく笑う隼人に、何も言えなくなった。


だけどその瞳は、やっぱりどこか悲しげで。



『…だけど、付き合っちゃダメなんだよな。
分かってたはずなのに、キスしたから…。』


そう言うと隼人は、悔しそうに唇を噛み締めて。



だから、“ごめんな”なの?


隼人があたしのことを好きなことくらい、わかってたよ。


でも、あたし達は想いあっちゃダメなの?



『…俺と付き合ったら、ちーちゃんは多分、普通の道には引き返せなくなる。
イッパイ心配させるし、一生ビクついて生活することになるかもしれない。』


「―――ッ!」


突きつけられる現実が、ただ痛かった。


隼人の仕事は、“普通”じゃなくて。


でもあたしは、“ただの高校生”で。


出会わなきゃ良かったんだ。


そしたら、こんなに苦しくなかった。


そしたら、こんな気持ちにならずにすんだのに。



「…今更、そんなこと言わないでよ…!」



だったら、嘘でも振って欲しかった。


“好きだ”なんて、言わないで欲しかった。


“遊びだよ”って、言ってくれれば良かったのに。


そしたらちゃんと、嫌いになれたのに。


もぉ、引き返せないじゃん…。



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