粉雪
決別
『―――ちーちゃん、ごめんな?
誕生日なのに…。』
「いいよ、明日も朝から仕事でしょ?
あたしも仕事だし!」
『…うん、また連絡するから。』
あたしの誕生日の晩、日付が変わる前に家に帰った。
バタンと閉まる車のドアに、だけどあたしは寂しくなんてない。
登る階段は足音を響かせ、少しだけ楽しくなった。
―ガチャ…
「…あれ?」
いつものように家の鍵を差すと、開いていることに気付いて、不審に思った。
ゆっくりとドアを開けると、瞬間、目を見開いた。
『…あら、お早い帰宅ですこと。』
「お母さん!
居たんだ…。」
玄関の前で、煙草を咥えて母親がこちらを睨んでいた。
鋭い眼差しに、目を背けるように足元に視線を落として靴を脱ぐ。
『…自分の家に居ちゃ悪いの?』
「…そーゆー意味じゃないよ…。
お店は?」
『…暇だから、早めに閉めたのよ。』
お互い目も合わせることなく、別々の方に歩いた。
先ほどまでは楽しかったはずなのに、急に心臓が早くなる。
あたしの居場所は、こんな所じゃないようで。
「…あたしさぁ、卒業したら家出ようと思ってるんだ。」
『あらそう。』
母親の言葉は、それだけだった。
分かっていたはずなのに、心に穴でも開いてしまったようで。
だけどそんなあたしにお構いナシに、母親は言葉を続ける。
『丁度いい機会だわ。
ついでだし、卒業したら親子の縁切らない?』
「…何、言ってんの…?」
平然と言う母親に、目を見開いて振り返った。
『…良いじゃない、アンタも18でしょ?
立派に育ててやったんだから、感謝の言葉の一つでも言えない訳?』
吐き捨てるように言われた。
誕生日なのに…。』
「いいよ、明日も朝から仕事でしょ?
あたしも仕事だし!」
『…うん、また連絡するから。』
あたしの誕生日の晩、日付が変わる前に家に帰った。
バタンと閉まる車のドアに、だけどあたしは寂しくなんてない。
登る階段は足音を響かせ、少しだけ楽しくなった。
―ガチャ…
「…あれ?」
いつものように家の鍵を差すと、開いていることに気付いて、不審に思った。
ゆっくりとドアを開けると、瞬間、目を見開いた。
『…あら、お早い帰宅ですこと。』
「お母さん!
居たんだ…。」
玄関の前で、煙草を咥えて母親がこちらを睨んでいた。
鋭い眼差しに、目を背けるように足元に視線を落として靴を脱ぐ。
『…自分の家に居ちゃ悪いの?』
「…そーゆー意味じゃないよ…。
お店は?」
『…暇だから、早めに閉めたのよ。』
お互い目も合わせることなく、別々の方に歩いた。
先ほどまでは楽しかったはずなのに、急に心臓が早くなる。
あたしの居場所は、こんな所じゃないようで。
「…あたしさぁ、卒業したら家出ようと思ってるんだ。」
『あらそう。』
母親の言葉は、それだけだった。
分かっていたはずなのに、心に穴でも開いてしまったようで。
だけどそんなあたしにお構いナシに、母親は言葉を続ける。
『丁度いい機会だわ。
ついでだし、卒業したら親子の縁切らない?』
「…何、言ってんの…?」
平然と言う母親に、目を見開いて振り返った。
『…良いじゃない、アンタも18でしょ?
立派に育ててやったんだから、感謝の言葉の一つでも言えない訳?』
吐き捨てるように言われた。