粉雪
もぉ、何も考えられなかった。


こんな場所から早く、逃げ出してしまいたくて。


待ちきれず、アパートの下で隼人を待った。



近づくヘッドライトは、あたしを照らす。


涙の溜まった視界は、ライトの所為で更にぼやけ。


車から降りてくる姿を見た瞬間、あたしは声を上げた。




「…隼人…!」


『ちーちゃん!何やってんの?!
風邪引くから!!』


瞬間、隼人に抱き締められた。


ただ、温かかくて。


その温もりにまた、涙が込み上げて。



「…助けて…!
もぉ嫌だよ…!」


そんな言葉ばかり、何度も繰り返した。



『ちーちゃん、落ち着いて!
泣いてちゃわかんないから!!』


だけど隼人は、あたしの目を真剣に見据え、声を上げる。


隼人の言葉で自然と落ち着きを取り戻し、

ゆっくりと、たどたどしくだけど全てを話した。


口にしてしまえば、先ほどのことが現実なんだと思い知らされているようで。


紡ぐ言葉はきっと、伝わっていなかったのかもしれない。


だけど震えるあたしを、隼人は抱き締めてくれた。


そこはまるで、あたしの“居場所”のようで。


怖かった。


だけど、隼人が居てくれてから。


隼人が抱き締めてくれたからあたしは、全てを話すことが出来たんだ。


今まで、誰にも言ったことなんてなかった。


だけど隼人は、そんなあたしの全てを受け止めてくれたんだ。



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