粉雪
『―――ちーちゃん、明日卒業式だね!』


「うん。
やっとってカンジ?(笑)」


卒業式を次の日に控え、隼人はフランス料理の店でお祝いしてくれた。



『…お母さん、来ると思う?』


「―――ッ!」


瞬間、唇を噛み締めた。


だけど振り払うように、あたしは笑顔を作る。



「…良いよ、その話は…。
それに、100%来る可能性ないし。」



隼人はいつも、あたしと母親の関係を心配してくれていた。


だけど、あたしはそんな話したくない。




『…そっか。
てゆーかさぁ、卒業祝いあげる!』


そう言って渡されたのは、車の鍵だった。



「…何コレ…?」


『ちーちゃんの車♪
安かったし、買っちゃった!』


「ハァ?!」


嬉しそうに言う隼人に、口元を引き攣らせた。



『…だって、あったら便利だし。
それに、初心者に俺の車運転させて、事故ったら大変じゃん?(笑)』



隼人の車は盗難車。


正規品のように偽造はしているけど、

事故でも起こして調べられたら、大変なことになる。




「でも―――」


戸惑うあたしに、隼人は言葉を続けた。



『大丈夫だよ?普通の車だし!
それに俺の名義だから!』


「そーゆー意味じゃないって!
あたしが言いたいのは―――」


『ちーちゃんは何も気にする事ないって言ったろ?
それに、万が一の為に正規の車は必要だよ?』



“万が一”


隼人は当たり前の様に言うけど、言われるあたしはいつも不安になってしまう。




『…ちーちゃん、俺の言うこと聞いといて?』


「…うん…。」


仕方なく、鍵を受け取りキーケースにつけた。



『車はもぉ、マンションの駐車場に置いてあるから。
まぁ、卒業式には乗って行けないけど(笑)』


「…だね。」


デザートのアイスクリームを食べながら、ため息をついた。


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