粉雪
工場跡地に着くと、入り口に隼人の車を発見した。


急いで車を降り、駆け寄ってみたが、そこに隼人の姿はなかった。


心臓が音を立てて鳴り響き、足が震える。



「―――隼人!!
どこにいるのー?!」


一帯を走り回りながら、叫び続けた。


だけど響くのは、あたしの声ばかり。





「隼人!!」


たくさんの積み上げられたコンテナの横で、隼人を発見した。


急いで駆け寄ると、寝転がっていた隼人は上体を起こす。



『…ちーちゃんだぁ…。』


「―――ッ!」


青白い顔をした隼人は、脇腹を押さえながら力なく笑った。


その体を支えるようにすると、瞬間、上着の下に見たものに目を見開いた。



「…何…コレ…!」


上着で隠しても分かるほどの出血に、思わず口元を押さえた。


その鮮血は、真っ白なシャツを赤く染めていて。



『…ちょっと、ヘマ…しちゃった…。
大丈夫だから…ね?』


隼人は途切れ途切れに言いながら、肩で息をしている。


その姿に、胸が締め付けられて。



「…大丈夫じゃないじゃん…!
病院行こうよ…!」


急いで自分の着ていたシャツを脱ぎ、隼人のお腹に巻きつけた。



『―――ァ!!』


低く呻く隼人に、あたしは唇を噛み締める。


本当は、直視することが怖かった。


だけど、“死なないで”って。


そればかりを考えてしまう。



『…病院には…行けない…。
大丈夫、かすっただけ…。
…深くないから…!』


精一杯で平然を装おうとする隼人に、涙が込み上げてくる。



「でも―――」


『ちーちゃん、聞いて…?
刺された傷だってわかったら…、警察に…通報される…。
こんなことで泣いちゃ…ダメだよ…?』


「―――ッ!」


声を上げるあたしに、隼人は諭すように言う。


その言葉に、何も言えなくなった。



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