粉雪
―――次の日、あたしは初めて仕事を休んだ。
どんなに風邪を引いても休まなかったのに、隼人のことだけが心配だった。
熱にうなされる隼人の傍で、あたしは手を握ることしか出来なかった。
それから3日後。
突然、チャイムが鳴った。
―ピンポーン…
この家に、お客が来たことはない。
不審に思い、玄関を開けた。
―ガチャ…
「どちら様―――!」
家の前に立っていた男は、ゴツ過ぎる体にスーツを纏い、
体中に付けられたアクセサリーの数々は、全てゴールド。
一目見て、“ヤクザ”のそれだと直感した。
吐き出す煙は、あたしに向けられた。
持っていたフルーツのバスケットが、酷く不似合いだと思った。
『…お穣ちゃん、誰だ?
本田賢治、いるんだろ?』
「―――ッ!」
“本田賢治”
隼人の偽名。
この名前を知っているのは、仕事相手か借金の借主くらいしかいない。
男は何も言えないあたしに、薄気味悪い笑いを向ける。
『アイツ、まだ生きてるんだろ?
勝手に上がらせてもらうぞ?』
何も言えずにただ固まっていたあたしに、
男は玄関に煙草の灰を落としながら足を進めた。
「ちょっと、待ってください!!」
やっと声を上げたあたしに、だけど男は構うことはない。
どんなに風邪を引いても休まなかったのに、隼人のことだけが心配だった。
熱にうなされる隼人の傍で、あたしは手を握ることしか出来なかった。
それから3日後。
突然、チャイムが鳴った。
―ピンポーン…
この家に、お客が来たことはない。
不審に思い、玄関を開けた。
―ガチャ…
「どちら様―――!」
家の前に立っていた男は、ゴツ過ぎる体にスーツを纏い、
体中に付けられたアクセサリーの数々は、全てゴールド。
一目見て、“ヤクザ”のそれだと直感した。
吐き出す煙は、あたしに向けられた。
持っていたフルーツのバスケットが、酷く不似合いだと思った。
『…お穣ちゃん、誰だ?
本田賢治、いるんだろ?』
「―――ッ!」
“本田賢治”
隼人の偽名。
この名前を知っているのは、仕事相手か借金の借主くらいしかいない。
男は何も言えないあたしに、薄気味悪い笑いを向ける。
『アイツ、まだ生きてるんだろ?
勝手に上がらせてもらうぞ?』
何も言えずにただ固まっていたあたしに、
男は玄関に煙草の灰を落としながら足を進めた。
「ちょっと、待ってください!!」
やっと声を上げたあたしに、だけど男は構うことはない。