粉雪
『よぉ、本田!
てめぇにメロン買って来てやったぞ!
それとも、死に花が良かったか?』


『―――ッ!』


持っていたフルーツのバスケットをガラステーブルに置き、

煙を吐き出しながら男は笑う。


だけど隼人の顔は、見たこともないほどの戸惑いを浮かべていた。



『…河本さん…!
何で…?』


“河本”と呼ばれた男は、瞬間、不敵に笑う。


そして隼人に近づき、口を開いた。



『朗報だ!
てめぇを刺した男、今朝殺した。』


「―――ッ!」


瞬間、河本の言葉に、頭が真っ白になった。


あたしの足は、入り口で立ち尽くしたまま動くことも出来ない。



『…ありがとうございます…。』



…本当に、殺されたんだ…!


深々と頭を下げる隼人を見ていると、頭がおかしくなりそうで。


心臓が止まってしまいそうで、正気を保つこともやっとだった。




『…オイオイ、話は最後まで聞けや!』


低く言う河本は、薄汚い顔を隼人に近づけた。


『1000万だ、この仕事の報酬。』


『…そんな…!』


瞬間、隼人は目を見開く。



『世の中、甘く見てんじゃねぇぞ?
1000万で殺してやったんだ!
安いもんだろ?アァ?』


『―――ッ!』


凄む河本に、隼人は唇を噛み締めた。


この二人が何を言ってるのかなんて、理解したくもなかった。


こんな現実、受け止めきれない。



『…文字通り、出血大サービスの値段だろ?
ヤツの保険金の受取人は、俺にしてある。
お前の1000万と合わせれば、3000万になる。
まぁ、こんなもんだろ?』


ハッと笑う河本は、煙を吐き出した。


唇を噛み締めていた隼人は、何かを振り払うようにして顔を上げる。



『…わかりました…。
でも俺、破産っすよ?』


誤魔化すように笑う隼人に、だけど河本は、その胸ぐらを掴んだ。




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