粉雪
部屋を包む空気は、恐ろしく重かった。
だから怖くて、あたしは笑う。
あたしの前での隼人は、何も変わらないから。
だけど夕方、隼人を刺した男が首を吊ったと、ローカルニュースで数秒間放送された。
『…首吊りなんて、早く保険金欲しいの見え見えじゃん…。』
まるで流れ作業でも見ているみたいに、ニュースは次の話題へ変わる。
何も言わずにテレビを見ていた隼人は、それだけ言ってテレビを消した。
幸か不幸か、事件は“借金苦による自殺”として片付けられた。
『…ちーちゃん、ごめんな?
何も心配しなくても良いから。』
あたしの心を見透かしたように、隼人は抱きしめる腕に力を込めた。
隼人の腕を握り締めながら、首を横に振ることしか出来なかった。
スカルプチャーの香りに、胸が締め付けられて。
「…怪我、早く治ると良いね…。」
『だな!
エッチ出来ねぇし♪』
「…馬鹿…!」
あたしが心配してるのは、そんなことじゃない…。
ホントはこの怪我が、一生治って欲しくなかった。
そしたら隼人は、仕事から足を洗うことが出来るのに。
だけどもぉ、あたしは何も言えない。
“本田賢治”の顔を見てしまったから、引き返すことなんて出来なくなった。
なのに、独りになっても泣けなくて、全てを抱え込んだ。
張り裂けそうになる胸の内を、誰にも話すことが出来ず。
だから怖くて、あたしは笑う。
あたしの前での隼人は、何も変わらないから。
だけど夕方、隼人を刺した男が首を吊ったと、ローカルニュースで数秒間放送された。
『…首吊りなんて、早く保険金欲しいの見え見えじゃん…。』
まるで流れ作業でも見ているみたいに、ニュースは次の話題へ変わる。
何も言わずにテレビを見ていた隼人は、それだけ言ってテレビを消した。
幸か不幸か、事件は“借金苦による自殺”として片付けられた。
『…ちーちゃん、ごめんな?
何も心配しなくても良いから。』
あたしの心を見透かしたように、隼人は抱きしめる腕に力を込めた。
隼人の腕を握り締めながら、首を横に振ることしか出来なかった。
スカルプチャーの香りに、胸が締め付けられて。
「…怪我、早く治ると良いね…。」
『だな!
エッチ出来ねぇし♪』
「…馬鹿…!」
あたしが心配してるのは、そんなことじゃない…。
ホントはこの怪我が、一生治って欲しくなかった。
そしたら隼人は、仕事から足を洗うことが出来るのに。
だけどもぉ、あたしは何も言えない。
“本田賢治”の顔を見てしまったから、引き返すことなんて出来なくなった。
なのに、独りになっても泣けなくて、全てを抱え込んだ。
張り裂けそうになる胸の内を、誰にも話すことが出来ず。