粉雪
「…子供が出来たら、あたしはもぉいらないの…?」


泣かないように、唇を噛み締めた。


だけど本当は、聞きたくない。



『…いらないのは、ガキだけだ。
産むにしても堕ろすにしても、ちーちゃんが決めて。
それで別れることになっても、仕方ないと思ってる。』


「…そんなの…!」



あんまりだよ!!


だけど苦しくて、あたしには決められない。


何か言えば泣きそうで。


隼人を責めてしまいそうで。




「…望まれない子供なんだね…。」


『そーゆーことだから。』


「―――ッ!」


隼人の目に、全身から血の気が引いた。


いつも“俺の言うこと聞いといて”って言うくせに…。


こんな時ばかり、決めるのはあたし。


そこに、隼人の意見はない。




「…もぉ…終わりなの…?」


震える声で聞いた。



『…ちーちゃんが望むならな。
堕ろしてでも、一緒に居たいと思える?』


「―――ッ!」



そんなの、わかるわけない。



「…わかんないよ…!」



ただ一つ言える事は、あたしには隼人以外に何もない。


隼人まで失ったら、あたしはきっと生きては行けなくなる。




『…迷ってんなら、堕ろした方が良いよ。
俺が言えるのは、それだけだから…。』


「―――ッ!」



今、言葉を発しているのは誰…?


あたしの知ってる隼人は、あたしにこんな顔しない…。


こんな酷いこと、言ったりしない…。




『…最初に言ったろ?
俺は、“結婚しよう”とも、“幸せにする”とも言えないって。』


分かりきっていたことなのに、その事実を今更突きつけられた。


隼人が言ってたのは、こーゆーことだったんだ…。


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