氷ノ様ナ鏡
◎短編
その日の麗音は真っ白で本当に綺麗だった
真っ白な紙に真っ白なインクを垂らしたようなどこまでも白い麗音はこの世の物とは思えなかった
俺はそんな麗音に触れたいけどあんまりにも綺麗で触れられなくて遠くからそれを見ていた
双子の兄の璃紅、他の人達は麗音に群がって俺もおいでって呼ばれたけれど俺は行けなかった
足が動かなかった
俺は誰よりも麗音が好きだった
なによりも優しくて穏やかなんだけど真があって強くて俺を包み込む麗音が大好きで愛おしかった
だから彼奴等が今優しく優しく麗音に触れて泣きそうな顔をするのが酷く疎ましかった
麗音は俺だけのものなのに
しばらくすると、琉紅が俺の隣に並ぶ
ゆっくり口を開いて(何を言っているかはよくわからない)俺の頭を慰めるように撫でた
俺がなんでみんな悲しそうなんだと聞けば琉紅はより一層悲しそうな顔をして俺を見た
そして俺においでと言って麗音の所へ導く
俺はいやだいやだと子供みたいに駄々を捏ねる
琉紅は目頭に手を沿えてうつ向いていた
他の人達も悔しそうに唇を噛み締めてうつ向いていた