氷ノ様ナ鏡

君は俺の側に居ない



静かな静かな夜

誰かが泣いている


うっすらと目を開けて

隣を見れば


愛しい人から

溢れるでる涙を

人差し指ですくおうとした



ぼんやりと

窓の景色を眺めて彼女を見る

やっぱり彼女は泣いている



すぐに抱き締めたかった

けれど

抱き締めてしまえば

小さな彼女が

消えてしまいそうで

触れることができない


だから変わりに名前を呼んだ


優しく


そっと


大事に


彼女がもう泣かないように

ゆっくり彼女が

俺を向見て笑う


うっすら小さく優しく


俺はなんだか

心地よくなって

目を閉じた


同時に涙が出た


安心したからではなく

悲しくて


なんで


泣いているのだろう





眠りの中

彼女が俺の頭を撫でている

そんな感覚がした


目が覚める


隣に手を伸ばして

彼女を確認したけれど

何も掴めない


横を向けば


誰もいなくて


変わりに

花が揺れていた


彼女の好きな花


真紅の薔薇





頭で理解する

涙が頬を伝って

ゆっくり落ちていった


そうか昨日は彼女が

消えた日だった





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