氷ノ様ナ鏡

◎短編






ある夜の暗闇で僅かにすすり泣く声がして俺は目を覚ます





うっすらと目を開けて隣を見れば付き合っている彼女が小さく小さく泣いていて俺はその溢れる涙を人差し指ですくおうとした、それからゆっくりと起き上がってぼんやりと窓の景色を眺めて彼女を見る

やっぱり彼女は泣いていて俺は居たたまれない気持ちになった

すぐに抱き締めたかったけれど抱き締めてしまえば小さな彼女が壊れてしまいそうで触れることさえできなかった


だから変わりに名前を呼んだ


なるべく優しく彼女がもう泣かないように

するとゆっくり彼女がこちらを向いて笑う


うっすら小さく優しく


彼女も俺の名前を途切れ途切れに呼んで俺はなんだか心地よくなって目を閉じた

もう彼女が泣かないと思うと安心してそれと同時に涙が出た


安心したからではなく悲しくて


なんで

俺は、泣いてんだろう





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