ウイニングボール
 祐樹はチームメイトを集めた。

「相手投手を見て気付いた事はないか?」

 祐樹は全員を見渡して問いかけた。チームメイト達は、「別に」とか「特には」とか、そんな言葉を呟く。

「奴の球種はストレートとカーブだけだ。それも簡単に見分けられるクセもある」
「マジかよ?」
「本当ですか?」

 祐樹の言葉に遊佐と平松が驚いた顔で聞き返した。

「ああ。ストレートの時はモーションの途中、グローブから腕を出した後に後ろに伸ばす。カーブの時はグローブから出した後、腕を曲げたまま頭の後ろから離れない」

 それを聞いたチームメイト達は一斉に投手を見つめた。確かに祐樹の言うとおりのクセがあった。聞いてなかったバッターはピッチャーゴロでアウトとなった。

「後はバットを短く持って脇をしめて打つんだ。球種が分かれば打てるだろ?」

 そう言うと祐樹はベンチに座った。チームメイト達はやる気がみなぎった様子で応援を開始する。
 祐樹の隣に平松が座った。

「すごいね。あんなクセ見破るなんて」

 祐樹は平松の言葉を聞いて内心ため息をついた。

「見てれば誰でも分かるようなクセだ。そんな事一番最初にするべきだろ。勝ちたいならな」
「……確かにそうだね」

 それだけ言うと平松は何も言わなかった。
 球種をよんでいるバッターは今までとは違い確実に打てるようになった。
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