ウイニングボール
「代打?」

 祐樹は相手を見た。

(盟邦? 去年の甲子園出場高か。たしかアイツは一年でエース、四番だったはず)

 おもしれぇ、と思った。絶対に打ち取ってやる、と。
 平松が構えた。祐樹は首を振りボール一個分外に構えさせた。

(いくぜ!)

 振りかぶって投げた。
 だが、生田は投げる前からボールだと分かっていたかのように見逃した。

「怖いのか? そんなに外に投げて」

 生田が祐樹を挑発する。
 祐樹は次に内角、これもボール一個外して投げた。生田はこれもあっさりと見逃す。

「まさかフォアボールじゃないよな?」

 笑いながら生田が言った。

(ふざけんなよ……。次は勝負だ)

 祐樹は振りかぶって投げた。内角低めギリギリだ。
 生田は思い切りバットを振った。

「なっ?」

 祐樹が驚きの声をあげる。ボールは祐樹の放ったホームランのように川へと消えていった。

「お前程度じゃ甲子園では通用しない」

 そう言うとベースを回りベンチに戻っていった。

 9-10。サヨナラだ。相手はすぐに帰っていった。

「国崎君」

 マウンドで呆然としていた祐樹に平松は声をかける。他のチームメイトも集まっていた。
 だが、祐樹は誰と話す事も無くグラウンドを後にした。
 
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