ウイニングボール
 唯華はベンチで試合を見ていた。負けてるのは確かに悔しかったが、それよりも遊ばれてる事に腹が立った。相手は全く真剣じゃない。真剣なこちらのチームを笑っているのだ。

「遊佐君! よく見て!!」

 どれだけ負けてても応援の声を出す事をやめなかった。その時土手の上から試合を見ている人に気がついて、その人物に走りよっていった。

「やっぱり……来てくれたんですね!」 

 息を切らしながら唯華はその人物に声をかけた。

「……別に来る気は無かったんだけどな」

 その人は祐樹だった。唯華は祐樹をベンチに案内した。ベンチに座ると祐樹は守備をする草野球チームに目をやった。

「遊ばれてるな……」
「はい。悔しいですよね……こっちは皆さん一生懸命なのに……」

 祐樹は悔しそうな唯華を見た。こんな草野球なのに本当に悔しがっている。

「まぁこれだけ実力に差があったらな」

 そんな事を言いながら実は祐樹も相手に若干ムカついていた。根はただの野球バカなのかもしれない。

「それでも! 悔しいです」

 守備を終えて戻ってきたチームメイトは殆んどの人間が試合が出来るだけで満足なようだ。笑顔のものさえいる。遊佐と平松は悔しそうだ。

「ま、相手が何で弱小高でさえ2軍なのか分かったけどな」

 そう言うと祐樹は相手を見つめていた。
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