worlds of last generationシリーズ 第一部
決まった…
そう思った時だった。
変わらない緩慢な動きのままで、ゆらりとサイドにずれる。
そんな動きで避けられるような物ではないのだが…ないはずなのだが――

「う…そ―――」
驚愕の声をあげる私。
気付けば相手に片手を捕まれていた。
そう――彼はあの緩慢な動きで至近距離から繰り出した私の攻撃を見事にかわし、それと同時に攻撃するために伸ばした手を掴んだのだ。

“最悪の状況”

そればかりが脳裏に浮かぶ私に構う事なく、掴んだ右手を引っ張り自分へと引き寄せる。
そのまま抱き締める形で両腕の自由を奪われた私に、もはや抵抗する術はなかった。

「僕の話を聞いて…」
絶望感と恐怖でいっぱいになっていた私の耳元で、そんな声が発せられる。
以外に声が低く、だが若さを残した声だった。
不思議に思い顔をあげる。
体が密着した状態のため、少し辛いが彼の顔を見つめた。
怪しい仮面に隠された瞳から、彼の真意を汲み取る事は出来ない。
けれど真剣な声色だったので、私はおとなしく彼の話を聞く事にした。
と言うか…それしか選択肢がないのだけれど――
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