worlds of last generationシリーズ 第一部
「いってぇな、この馬鹿力。そんなんだから彼氏出来ねぇんだよお前」
「あんたがムカつく事言うからでしょ?その減らず口さえなければ私だってこんな事しないのに…」
脇腹を押さえて、顔を歪めながらそう言ったこいつに、また少し怒りを覚えながらも溜め息混じりに言い返す。

こんなやりとりをしている内に、いつの間にか信号は青に変わっていた。
今まで止まっていた人混みが、我先にと進んで行く。
喋りながら歩く人達をすり抜けて、憂鬱な表情を浮かべながら忙しそうに歩いて行く群れを見送る。

「…渡らないのか?」
そう右上から不思議そうな声がした。
「渡るよ、ただ――」
「ただ?」

“皆寂しそうだなって…思っただけ”

そう紡ごうとした言葉を呑み込んだ私に、彼直ぐに聞き返す。
「やっぱり良いや。なんでもない」
私は少し深呼吸をして、雑念を振り払うと笑顔でそう言った。

「言い掛けて止めるな、気になるだろ」
少し顔をしかめながら、彼は言う。
「良いから良いから。ほら、早くしないと遅刻するよ」
そう言って彼の言葉を無視して、信号の変わりそうな横断歩道を走った。
後ろから
「待て!」
と言う声が聞こえたけど、無視して駆けていく。

そうして私の一日は始まる。
いつも通りの朝、彼とふざけ合いながら学校へと向かう道。
それが堪らなく楽しくて、いつもこの時間を選んで登校しているのは内緒。
そうして彼と話ながら歩いていると、いつの間にか学校についていた。

< 3 / 84 >

この作品をシェア

pagetop