worlds of last generationシリーズ 第一部
耳元で聞こえる甘ったるい囁き。
初めて彼に呼ばれた私の名前は、酷く脳裏に残って離れない。
でもそれはきっと――
今まで呼ばれた事がなかったから。

この胸の高鳴りにそう結論付けて、私は彼とお昼になるまで一緒にいた。
屋上の扉付近の壁に持たれながら二人で座って、他愛のない話をしながら、今まで知らなかった事とか静夜の普段考えてる事とか、沢山聞いた。

私は私で彩葉達と話す様な事とか家の事、兎に角時間が許すまで話ながら…あの日の様に笑い合う。
そんなお昼前の屋上で、私達は昔の日々を取り戻していた。

――無粋なチャイムの音で、花の咲いていた会話に終止符が打たれる。
「もうそんなに時間経ってたんだ」
少し驚いた私は気付けばそう呟いていた。

「時間を忘れる程、俺と居るの楽しかったの?ゆぅちゃん」
「からかわないでよ」
嬉しそうに笑う静夜に、そう言い返して立ち上がる。

「―――けどな…」
「何?」
聞き取れない程の小さな呟きに、聞き返す。
「何でもないよ」
けれど少し困ったように笑いながら、静夜も立つ。

「行こう?ゆぅちゃん」
私に手を差し出しながら言う彼に頷いて、その手を取る。
静夜は満足そうに笑うと歩き出した。

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