worlds of last generationシリーズ 第一部

私が引っ越す前にいた幼稚園で、一緒の組だった子。
他の子達はみんな無邪気にはしゃいでいるのに、一人だけただ黙々と読書していた。

何をするにも一人。
そんな彼女は、酷く冷たい視線を全てに向けていた。
それが酷く印象的で、今でも覚えている。

「…亜…亜」
何かが聞こえる。
短く呟いているような感じで。
「…亜……由亜!!」
はっとして顔をあげた。
目の前には、彩葉と美夜那が心配そうに私を見つめている。

「由亜…？大丈夫？」
「やっぱり具合いが悪いんじゃないの？」
二人はそう言って、私の顔を覗く。
「今日は朝からこんな感じだったもんね…本当に大丈夫？」
横から心配そうな仲戸の声が聞こえてくる。

「大丈夫だよ。ちょっと昔の事思い出しただけだし、みんな心配し過ぎ」
何で今更…思い出したんだろう？
疑問が脳裏を過るけど、私は考えないようにして、笑いながらそう言ったが、まだ納得できていないのか…不に落ちなさそうな表情をしている。

「だが――」
「ゆぅちゃん!!」
何かを言おうとした小手川を遮り、強く扉をスライドさせる音が教室内に響く。
けれど私は顔を確認する前に、その人物が誰なのか分かってしまった。