worlds of last generationシリーズ 第一部
「えぇ!?ちょっ静夜!?」
「黙って!舌噛むよ?」
慌てふためく私に対して、冷静に注意する彼。
いやいやいや。
黙ってられませんよ。
この状況何だよ?
て言うか何でお姫様だっこなの!?
私の体重がばれるじゃない!!

「いや、静夜下ろして!自分で走れるから!!」
「こっちの方が早いでしょ?遅れるの嫌ならおとなしくしてて」
「そういう問題じゃない!!私重いから」
「全然、これで重いって言う奴居たら見てみたいね」
「いやあぁ!本当に下ろしてえぇ」

体育館までの道のりは、二階の廊下の突き当たりにある、別校舎まで続く渡り廊下を進まなければならない。
ともすれば、この現状をかなりの人達に見られるわけで…

「恥ずかしい…恥ずかしいって!!人に見られてるから!」
「気にしない!ほら、もう少しで渡り廊下だから」
そう言うや否や、静夜は走る速度を上げた。
頬を霞めていく風が強さを増す。

ざわざわと騒がしかった喧騒が、一気に遠ざかって行く。
もう誰も居ない渡り廊下を、私は静夜に抱えられながら移動する。
窓から入る日差しと、見える桜の蕾が…流れてはまた視界に入っていく。

綺麗だな――と。
干渉に浸る余裕も無く、何時しか渡り廊下の窓は校舎の壁に移り変わっていた。

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