平々凡々なストーカーです。
上を向くと彼女があの窓を開けていた。

部屋の光で見える彼女の顔は僅かに赤らんでいて多分、風呂あがりなのだろう。

薄い黄色のパジャマを着て外の風を受けている。

気持ちよさそうに風を受けてにこと笑った。

それから彼女は星がわずかに出ている空を見て鼻歌を歌いだす。

嘘だろ・・・なんだこの嬉しすぎる出来事。

俺は慌てて鞄に手を突っ込み、最近買ったばかりの小型のビデオカメラを取り出す。

それのピントを彼女に合わせて撮りだした。


彼女はまだ鼻歌を歌って、空を見る。

しかし、それから何かに気がついたように顔を引っ込めてしまった。


しまった。ばれたか。

あせって逃げ出そうかと思ったが彼女はまた窓から顔を出してくる。

その手には俺が彼女の下駄箱に入れておいた封筒。

丁寧にはさみで開けて中身を取り出し、読み出した。

中身は2枚の便箋が入って、どちらにもびっしりと書いてある。


1枚目は昨日の彼女の表情とか、授業中によく出来たこと、彼女の1日の出来事をこと細かく書いて俺の感想もそえる。

2枚目は俺の彼女に対する気持ちを書いたものだ。

これは毎日同じ内容。

「ふぅ・・」

しばらくして彼女は読み終わるとまた笑い出した。

いつもの微笑みに俺は見とれる。それから彼女はまた顔を引っ込めて今度は窓を閉めてしまった。

それを確認して2時間後、俺は家へ帰ることにした。

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