いつかは…
キッチンで手を洗って、テーブルにつくと、アイラの大きな目の輝きが一層増した。
大好きな猫の絵がケチャップでオムライスに描かれていたのだ。
スプーンを振り回して嬉しさを表現しているが、「行儀が悪い」とアユミに一喝されてしまった。
それでスプーンを振り回す事はやめたが、嬉しい事に変わりはない。

上機嫌で母親の、[例の合図]を待っている。



「はい、じゃあご飯にしましょう。いただきます。」

「いただきます!!」



食事の挨拶と同時に一生懸命にオムライスを食べている。
その様子をみてアユミは半場呆れ、アキラはニコニコと笑っている。
子供特有の不器用さが出るたびにアユミの「アイラ、こぼしてるよ。」「ほっぺたついてる。」「あぁあ、服にいっぱいついちゃって…」等と聞こえる。

平和な昼食に満足感を覚えながら、食事は進んでいった。



「アキラ、こぼしてる。まったくもうアイラじゃないんだからよそ見して食べないの。」



ふと手元を見ると、少しこぼしてしまっていた。
アユミの差し出した布巾を照れくさそうに受け取ると、綺麗にふき取って返した。



「アイラの不器用さんはパパ似だねぇ~?」

「な…アユミ似だよ。」

「不器用さんがオムライスに猫の絵なんか描けないよ~だ。」



茶化して遊んでいるのだろう。

アキラは何も反論できずにただ苦笑してみた。
それに返ってきたのが、アユミとアイラの楽しそうな笑顔だった。

笑顔をみてまた幸せを感じた。

小さな幸せだが、得られたものは大きい。
今の自分が生きる意味と、小さな命の大切さ、かけがえのない人の存在。

それがアキラをこれからも成長させるのだろう。
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