青碧の魔術師(黄昏の神々)
「そんな! いけません! あのような物を召喚しては、御身に危険が及びます!」
「かまわない。あれを殺す訳にはいかない……ならば捕縛して送り返すしか手は無い。あれでも神の端くれ、いなくなれば均衡が崩れる」
「ですが……」
「ルルイエ」
渋るルルイエに、シュリの声が重なる。
意見も反論も聞き入れそうに無い、頑(かたく)なな物言いに、ルルイエは黙って従うしか無かった。
「召喚。捕縛の椅子」
ルルイエが空中で召喚の呪文を唱えるタイミングで、結界を引いていたロイがシュリの下へ戻って来た。
「捕縛の椅子。あんな物呼び出してどうするの?」
ロイも、シュリの真意が読み取れない。
《捕縛の椅子》
それは、神の座す椅子。
神を捕らえ封じる為に、旧神と人間が協同で作り出した、ハスターをひとところに閉じ込める為に造られたアイテム。
遥か昔。
捕縛の椅子によって、捕らえられていたハスターが、どのようにして逃れたのか。
そして如何なるいきさつを持って、シュリとして、今を生きているのか。
それは、当の本人にしか解らない。
そんな彼が、己を縛り、封じるかもしれない、危険な道具を呼び出す真意。
それは、綿々と繰り返される『彼の思い』の中にあった。
「捕縛の椅子だと!?」
シュリとロイ、ルルイエの会話を、耳をそばだてて聞いていたナイアルラトホテップが、驚嘆の声を上げ、次の瞬間、辺りに彼の歓喜の声が響き渡った。
「丁度良い! 私がその椅子、使わせて頂きましょうか。貴方を捕らえる為に……」
「さて……そう上手く事が進むかな?」
嘲笑を、目の前の男に向ける、ナイアルラトホテップ。
それに対して、虚勢を張っている訳では、なさそうに見えるシュリの姿。
シュリの口角が、弧を書くようにゆっくりと上がって、笑みの形を作り上げた。
自然と滲み出る、余裕と自信。
それらに満たされた神は、その姿を隠していても内面から光り輝いて見えて、辺りの人々はその姿に、目を逸らす事が出来ないでいた。
「かまわない。あれを殺す訳にはいかない……ならば捕縛して送り返すしか手は無い。あれでも神の端くれ、いなくなれば均衡が崩れる」
「ですが……」
「ルルイエ」
渋るルルイエに、シュリの声が重なる。
意見も反論も聞き入れそうに無い、頑(かたく)なな物言いに、ルルイエは黙って従うしか無かった。
「召喚。捕縛の椅子」
ルルイエが空中で召喚の呪文を唱えるタイミングで、結界を引いていたロイがシュリの下へ戻って来た。
「捕縛の椅子。あんな物呼び出してどうするの?」
ロイも、シュリの真意が読み取れない。
《捕縛の椅子》
それは、神の座す椅子。
神を捕らえ封じる為に、旧神と人間が協同で作り出した、ハスターをひとところに閉じ込める為に造られたアイテム。
遥か昔。
捕縛の椅子によって、捕らえられていたハスターが、どのようにして逃れたのか。
そして如何なるいきさつを持って、シュリとして、今を生きているのか。
それは、当の本人にしか解らない。
そんな彼が、己を縛り、封じるかもしれない、危険な道具を呼び出す真意。
それは、綿々と繰り返される『彼の思い』の中にあった。
「捕縛の椅子だと!?」
シュリとロイ、ルルイエの会話を、耳をそばだてて聞いていたナイアルラトホテップが、驚嘆の声を上げ、次の瞬間、辺りに彼の歓喜の声が響き渡った。
「丁度良い! 私がその椅子、使わせて頂きましょうか。貴方を捕らえる為に……」
「さて……そう上手く事が進むかな?」
嘲笑を、目の前の男に向ける、ナイアルラトホテップ。
それに対して、虚勢を張っている訳では、なさそうに見えるシュリの姿。
シュリの口角が、弧を書くようにゆっくりと上がって、笑みの形を作り上げた。
自然と滲み出る、余裕と自信。
それらに満たされた神は、その姿を隠していても内面から光り輝いて見えて、辺りの人々はその姿に、目を逸らす事が出来ないでいた。