青碧の魔術師(黄昏の神々)
シュリの笑いを噛み殺す声と《ふえぇー》と、言うロイの情けない声に混じって、靴音がした。

少女は、ロイを抱えると、不安そうにシュリと、靴音のする方を交互に見た。

シュリは、そんな少女とロイの様子を見て、深い溜め息を付く。


『ロイといると、平穏無事とは行かないらしいな』


「シュリー」


情けない声が、直一層情けなくなる。

シュリは、もう一度大きく息をはくと、1人と1匹に声をかけた。


「お前達……」

「はっ! はいっ!!」

「ぼーっと、突っ立ってないで、早くこい」


少女は、シュリの言葉に、ロイを離して弾かれた様に走り出すと、満面の笑みを零して、シュリに抱き着いた。

少女の小柄な身体が、シュリの胸にすっぽりと納まり、ロイはシュリの足にしがみ付く。

少女は、安堵の息をはいた。


「ありがとうございます」

「礼を言うのはまだ早い……」


そう言ってシュリは、少女の前に出ると、険しい瞳を前方へ向けた。

視線は前へと向けたまま、少女を身体で隠す。

シュリは、到着した4人の男どもに囲まれた。


『4人の内3人は、素人じゃ無いな……。服装からして軍人か……。残り1人は貴族のボンボンと言った所か?』


勝てない相手ではない。
普段から上級魔物相手に戦っているシュリにとって、街をたむろする軍人等取るに足らない相手だった。
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