青碧の魔術師(黄昏の神々)
それは、シュリの額にあった瞳を、絵に描いた様な物。
彼の力が、イシスの額に収束し、結晶化した物が、彼女の額に浮かび上がったのだ。
その、紫青色の結晶の周りを、囲う様に走る横長の縁取りは、よく見ると、細かな文字の収束となっていて、それらは横に開く目の様に、イシスの額に現れ出ていた。
「イシス……」
シュリが、彼女の名を、柔らかくて、甘やかな声音で囁く。
彼の声に導かれたのか、はたまた偶然だったのか、イシスの重く閉じられた瞼が小刻みに揺れ動き、やがて、ゆっくりと開いた。
ニ、三度瞬きをすると、イシスは、くりくりとした瞳で、自分を見下ろすシュリを見た。
「シュリ……さま? 私……」
「気分はどうだ? 痛い所は無いか?」
あれ程、拒絶の言葉を吐いていたシュリも、イシスを心配してか、柔らかな声と表情で彼女を迎え入れた。
それに黙っていられないのが、漣で。
間抜けにも、シュリに絡む言葉をかけた。
「シュリってば、イシスちゃんには優しいんだ〜! なんか羨ましい……」
絡んだのは自分だと言うのに、漣の声は何処か寂しい。
その言葉に、シュリはひとつ息を吐くと、漣を一瞥し、言った。
「なら、早々に帰るんだな。あんたの、大切な者の所へ……」
「だね〜。私も恋しくなったよ」
「せいぜいしぼられるんだな」
「いやいや、うちのハニーなら褒めてくれるよ」
漣の言葉に、シュリはふと考え込んで、何かに思い当たったのか、顔をしかめた。
「悔しいが、案外その見解は、当たらずしも遠からずって所かもな……」
シュリの瞼の裏に浮かぶのは、青銀の髪を長く伸ばした美女。
己の夫と息子を助ける為に、命をかけた、ザイラスの女王。
彼女の、何事にも諦めない精神と、潔いと言い切れる行動力に、シュリは敬服していた。
静かに目を閉じていたシュリが、自嘲の笑みをその顔に湛えると、ふと目を開きイシスに視線を移す。
そこには、不安をあらわにしたイシスの瞳があった。
ククッとシュリが笑う。
そのせいでイシスの瞳が直一層不安に揺れ動いた。
彼の力が、イシスの額に収束し、結晶化した物が、彼女の額に浮かび上がったのだ。
その、紫青色の結晶の周りを、囲う様に走る横長の縁取りは、よく見ると、細かな文字の収束となっていて、それらは横に開く目の様に、イシスの額に現れ出ていた。
「イシス……」
シュリが、彼女の名を、柔らかくて、甘やかな声音で囁く。
彼の声に導かれたのか、はたまた偶然だったのか、イシスの重く閉じられた瞼が小刻みに揺れ動き、やがて、ゆっくりと開いた。
ニ、三度瞬きをすると、イシスは、くりくりとした瞳で、自分を見下ろすシュリを見た。
「シュリ……さま? 私……」
「気分はどうだ? 痛い所は無いか?」
あれ程、拒絶の言葉を吐いていたシュリも、イシスを心配してか、柔らかな声と表情で彼女を迎え入れた。
それに黙っていられないのが、漣で。
間抜けにも、シュリに絡む言葉をかけた。
「シュリってば、イシスちゃんには優しいんだ〜! なんか羨ましい……」
絡んだのは自分だと言うのに、漣の声は何処か寂しい。
その言葉に、シュリはひとつ息を吐くと、漣を一瞥し、言った。
「なら、早々に帰るんだな。あんたの、大切な者の所へ……」
「だね〜。私も恋しくなったよ」
「せいぜいしぼられるんだな」
「いやいや、うちのハニーなら褒めてくれるよ」
漣の言葉に、シュリはふと考え込んで、何かに思い当たったのか、顔をしかめた。
「悔しいが、案外その見解は、当たらずしも遠からずって所かもな……」
シュリの瞼の裏に浮かぶのは、青銀の髪を長く伸ばした美女。
己の夫と息子を助ける為に、命をかけた、ザイラスの女王。
彼女の、何事にも諦めない精神と、潔いと言い切れる行動力に、シュリは敬服していた。
静かに目を閉じていたシュリが、自嘲の笑みをその顔に湛えると、ふと目を開きイシスに視線を移す。
そこには、不安をあらわにしたイシスの瞳があった。
ククッとシュリが笑う。
そのせいでイシスの瞳が直一層不安に揺れ動いた。