青碧の魔術師(黄昏の神々)
「では姫に聞く。貴女は青碧の魔術師の存在をセレナを通して知ったと言うんだね」

「はい。確かにあの女性は、セレナと名乗りました。間違いありません」

「そうか……」


シュリが神妙な顔で考え込む。

そして……。

愛おしむ様に……。

ふわりと微笑した。


この微笑みだけは、彼の本心から来る笑み。

その証拠に……

ドキン!!

イシスの心を虜にしてしまった。

彼が唯一、人に戻れるのは、セレナとの優しい時間の想い出だけだった。




シュリの何とも言えぬ優しい表情に、イシスは胸を高鳴らせた。


『私にも、向けて欲しい。あのような表情……。セレナさんが、羨ましいです。私は……この気持ちは…………一目惚れという恋なのでしょうか? それとも、セレナさんの心の影響を、受けているだけなのでしょうか……?』


心が何処か、暗闇に堕ちて行く錯覚に襲われた時、イシスは自分の名を呼ばれる事で、正気に返る事が出来た。


「姫? イシス姫」

「あっ!! はっ……はいっ!!」

「大丈夫か? 何処か具合でも悪いのか?」


心配しているのか、いないのかシュリの声音が重くて、冷たい。


「大丈夫です。何とも有りません」

「そうか? ならいいんだが……」


シュリは、セレナの事を思い出すと共に、イシスの事もちゃんと見ていた。 


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