青碧の魔術師(黄昏の神々)
契約
「イシス姫。貴女の一途な思いに免じて、今回に限り、貴女を助けよう。だが、この国に仕えるつもりは無いから」
シュリは、イシスを見た後、ずっと沈黙を守っていたエステルを見た。
そして立ち上がるとイシスの元へと歩み寄り、宣言するように彼女に言った。
「俺の名は、シュリ=ザイラス=キサラギ。魔道王国ザイラスの最後の魔術師にして、お前達が『青碧の魔術師』と呼ぶ者だ」
冷たい声音にもかかわらず、不意にシュリが、イシスに向けて苦笑して見せる。
『本当に、世話がやける』
と、でも言うかの様に……。
「立って。姫」
シュリの要請にイシスは、首を傾げつつ立ち上がる。
背の低いイシスは、頭がシュリの胸下位迄の高さしかない。
従って彼を、背伸びして見上げる仕草になる。
整ったシュリの顔が、今迄で一番近くに見えて、イシスの胸が、うるさい位早鐘を打つ。
その事に気付いているのかいないのか、涼しい顔でシュリが言った。
「契約をするぞ。仮契約だが致し方ない。本契約をする訳にはいかないしな……」
「契約?」
「あぁそうだ。一時的だが、俺がお前の為の、魔術師になる、と、言う契りだ。これをしないと制約のせいで、お前の為に魔術をふるえない」
「わかったか?」とシュリはイシスにそう告げて彼女の瞳をじっと見つめた。
イシスも小さく一言「はい」と答えると、瞬きをしながらシュリを見つめ返した。
爪先立ちの為、シュリにもたれ掛かる様にして、見返している姿が、端から見て、抱き合う恋人達の様に見えたのは、ロイやエステルだけでは無い だろうと思われた。
と、言っても、一人と一匹しか、この場には居なかったのだが。
シュリは、イシスを見た後、ずっと沈黙を守っていたエステルを見た。
そして立ち上がるとイシスの元へと歩み寄り、宣言するように彼女に言った。
「俺の名は、シュリ=ザイラス=キサラギ。魔道王国ザイラスの最後の魔術師にして、お前達が『青碧の魔術師』と呼ぶ者だ」
冷たい声音にもかかわらず、不意にシュリが、イシスに向けて苦笑して見せる。
『本当に、世話がやける』
と、でも言うかの様に……。
「立って。姫」
シュリの要請にイシスは、首を傾げつつ立ち上がる。
背の低いイシスは、頭がシュリの胸下位迄の高さしかない。
従って彼を、背伸びして見上げる仕草になる。
整ったシュリの顔が、今迄で一番近くに見えて、イシスの胸が、うるさい位早鐘を打つ。
その事に気付いているのかいないのか、涼しい顔でシュリが言った。
「契約をするぞ。仮契約だが致し方ない。本契約をする訳にはいかないしな……」
「契約?」
「あぁそうだ。一時的だが、俺がお前の為の、魔術師になる、と、言う契りだ。これをしないと制約のせいで、お前の為に魔術をふるえない」
「わかったか?」とシュリはイシスにそう告げて彼女の瞳をじっと見つめた。
イシスも小さく一言「はい」と答えると、瞬きをしながらシュリを見つめ返した。
爪先立ちの為、シュリにもたれ掛かる様にして、見返している姿が、端から見て、抱き合う恋人達の様に見えたのは、ロイやエステルだけでは無い だろうと思われた。
と、言っても、一人と一匹しか、この場には居なかったのだが。