青碧の魔術師(黄昏の神々)
シュリは、泣きそうなイシスを見て、不思議そうに言った。


「何故、姫、貴女が泣くのだ?」


そう、イシスは何時の間にか泣いてしまっていたのだった。








「さて、イシス。この契約は、俺の為では無く、お前の為に行うものだ。何においてもお前の命を最優先に扱う為の遺伝子採取。その為の行為だと言う事を忘れるな」


シュリは、契約を済ませようと、イシスに説明を施していた。


「いでんし??」

「あぁ……お前は解らなくていい。全て俺に任せろ」


シュリはそう言うと、イシスの顎に手をかけて、仰向かせた。


「目を閉じろ。開けられてると、やりずらい……」


シュリの言葉に、何と無くこの先の展開が読める気がして、イシスの心臓が跳び上がる。


『もしかして、これはキスをする所ですか!?』


パニックに陥りかけたその時、イシスの唇を塞ぐ感触に彼女は、閉じた目を見開いた。

シュリの顔がぼやける程近くにある。

確かに、イシスの唇を奪っているのはシュリだった。

イシスにとってこれはファーストキスだった。

なのに。

シュリは、ただ合わせるだけのキスから、歯列をなぞり口咽を割るキスをイシスに施す。

初めてのキスをこう言う形で奪われて、さすがに気になる人でも抵抗してしまう。

だがそのうち、抵抗する意思すら剥ぎ取られて、イシスは、シュリに抱きすくめられたまま、その身を彼に預けていた。

胸が掻き乱されて苦しいのは、息が出来ない苦しさなのか、はたまた恋しい人との口付けのせいなのか。


『あぁ……もう駄目。このようなキスは、初めてです……私……』


身体に甘い疼きを覚え、立っている事すら叶わない。

身体が足元から崩おれていく感覚に、イシスは襲われる。

意外と逞しい腕が彼女を抱え込み、今迄よりもなお深く、イシスを味わいつくしていく。


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