青碧の魔術師(黄昏の神々)
イシスは、なぜか自分のベットで目が覚めた。

レースのフリル付き天涯ベット。

白とピンクのアンティークの猫足クローゼットに、同じ形の鏡台。

それにテーブルとソファー。

暖炉の上には、家族の絵姿やら、人形やらが所せましと並んでいる。

至ってシンプルで、女の子らしい部屋だ。

イシスが何度か、目をこする。

意識がはっきりして来た時、顔から火が出そうになる位、イシスの顔が真っ赤になった。


『わたし……』


シュリが、契約と言った行為が、頭に浮かぶ。

深くて情熱的な口付け……。


『あんなキスは、初めてなのにいつの間にか、応えていた自分が恥ずかしい……。あれは、ファーストキスだったのに……』


「気が付いたか? イシス」


傍らから声がしてイシスは、名を呼ばれた方に振り向く。

そこには、ソファーに腰掛けイシスを見る兄がいた。


「兄様……私……」

「契約中に、気を失ったらしい」


きわめて事務的に話すエステルに、イシスは首を傾げた。

エステルのイシスを見る目が厳しい。

エステルは一体どうしたのだろうか。


「兄様?」

「イシス。あの男は止めておけ」

「何の事です? あの男って……シュリ様の事ですか?」

「そうだよイシス。『青碧の魔術師』あの男はそう名乗ったが何処まで本当か、知れたものじゃない」

「兄様! そんな風に言うものではありませんわ」


イシスは兄をたしなめる様に言葉を紡ぐ。


「シュリさまは、私を守るとおっしゃって下さいました。そして、私を助けようとして下さってます。私は、あの方を信じております」


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