青碧の魔術師(黄昏の神々)
「さあ、妹よ。この兄が、今夜は飛び切りの美人にしてやるぞ。誰もが見惚れる程の美人にね。そして、お前が好きになったあの『魔術師』を、とりこにしてやろう!」


エステルは、そう言ってイシスを離した。


『あの男が本当に、『青碧の魔術師』かどうかは、解らない。だが、もし本人なら、イシスの恋を叶えてやっても、損は無いかも知れない。あの男が持つ、魔術師の力、我が国に欲しい……』


エステルは、思考を廻らせる。

イシスは、必ずあの男に付いて行くだろう。


『旅先で二人が良い仲にでもなれば……』


『兄としては、ちょっと、いや……かなり悔しいが、仕方がない。皆の為だ……』

エステルは、愛しい妹を送り出してやる決意をする。

だが今は、今夜の宴で妹を、あの男……シュリが、見惚れる程の女性に変身させる事が、自分の使命だと心を奮い立たせる。


「イシス。少し早いが、お兄ちゃんがお前に誕生日のプレゼントをあげよう」

「プレゼント?」


イシスが不思議そうに首を傾げる。


「まぁ、この兄にまかせなさい。後でアライナをを来させるから」


エステルは、そう言うと、イシスの頬にキスして立ち上がる。


「もう少し休んでいるといい。今夜は忙しくなるからね」


エステルは去り際に、妹を労る言葉をかけて、イシスの部屋を後にした。





エステルが退出すると、イシスは何と無くベットを降りて、バルコニーへと出た。

二階の自室から辺りを見渡す。

眼下には色とりどりの花達が、咲き乱れる花園が広がっていた。
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