青碧の魔術師(黄昏の神々)
「シュリさまは、私の初めてのキスを、契約と言う形で奪いました……。それが、どんなに悲しい事か、ご存知ですか?」
イシスの告白に、シュリが目を見張った。
彼女の事を、簡単に考えていた訳では無い。
だが、配慮には欠けていた。
姫君なのだから、男女事の全てが、未経験とも考えられたのだ。
政略結婚と言う、他国に嫁ぐ役目と言うものが、暗黙の了解として、大国の姫君にはある。
だから自ずと知識は、教えられるのが常とされる。
だが、この姫君のおぼこさからすると、その常識もどうだかとは思うのだ。
『確かに、彼女に意向を問わずに行動した俺が悪い』
そう考えたシュリは、素直にイシスに頭を下げた。
「配慮に欠けていた。すまない」
腰を折り、きっちり頭を下げるシュリに、イシスは、彼の顔を上げさせて、微笑む。
「分かって下さったのでしたら、それで良いです。もう、怒っていませんから」
優しい笑顔。
聖母の慈愛の微笑みに、食い入る様にみつめるシュリは、どうしても目線が外せない。
「イシス……。確かに俺は、契約の名の下に、お前に口付けた。だが、いつのまにか、本気になっていた自分に気が付いた」
シュリの言葉に、あたかも信じられない物でも見たかの様に、イシスの目が見開かれ、徐々に開花していく花の如く、満面の笑みをそのかんばせに顕せてゆく。
「それは、私の事を愛してくれている。そういう意味でしょうか?」
「それは……。俺には分からない。愛や恋、等と言う感情は、今の俺には抱く事すら出来ない。かつて、人を愛した事があったにもかかわらずにな……」
そう語るシュリの瞳には、硝子玉の様な、無機質な色しかうかがえない。
イシスは、彼の瞳を見つめつつ、しっかりとした意志を持ってシュリに諭した。
イシスの告白に、シュリが目を見張った。
彼女の事を、簡単に考えていた訳では無い。
だが、配慮には欠けていた。
姫君なのだから、男女事の全てが、未経験とも考えられたのだ。
政略結婚と言う、他国に嫁ぐ役目と言うものが、暗黙の了解として、大国の姫君にはある。
だから自ずと知識は、教えられるのが常とされる。
だが、この姫君のおぼこさからすると、その常識もどうだかとは思うのだ。
『確かに、彼女に意向を問わずに行動した俺が悪い』
そう考えたシュリは、素直にイシスに頭を下げた。
「配慮に欠けていた。すまない」
腰を折り、きっちり頭を下げるシュリに、イシスは、彼の顔を上げさせて、微笑む。
「分かって下さったのでしたら、それで良いです。もう、怒っていませんから」
優しい笑顔。
聖母の慈愛の微笑みに、食い入る様にみつめるシュリは、どうしても目線が外せない。
「イシス……。確かに俺は、契約の名の下に、お前に口付けた。だが、いつのまにか、本気になっていた自分に気が付いた」
シュリの言葉に、あたかも信じられない物でも見たかの様に、イシスの目が見開かれ、徐々に開花していく花の如く、満面の笑みをそのかんばせに顕せてゆく。
「それは、私の事を愛してくれている。そういう意味でしょうか?」
「それは……。俺には分からない。愛や恋、等と言う感情は、今の俺には抱く事すら出来ない。かつて、人を愛した事があったにもかかわらずにな……」
そう語るシュリの瞳には、硝子玉の様な、無機質な色しかうかがえない。
イシスは、彼の瞳を見つめつつ、しっかりとした意志を持ってシュリに諭した。