青碧の魔術師(黄昏の神々)
「いけない! 誰かが、私を捜しています。シュリさま……」


名残惜しそうにイシスの瞳が揺れる。


「お願いがあります」

「なんだ?」


イシスの呼びかけにシュリはぶっきらぼうに答えた。


「いつかは、私を見て下さいね」


イシスの意味深な言葉。

彼女はその真意をシュリに伝えず、二、三歩後退り、


「約束ですよ」


そう言って走り去った。


その場に残されたシュリの顔を風が撫でてゆく。

風に煽られた髪をかきあげ、シュリはイシスが消えた方をじっと見つめていた。


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