青碧の魔術師(黄昏の神々)

ロンディア王国王立図書館

その頃、ある思惑を持って、エステルは王立図書館へと足を運んでいた。


『目に入れても痛くないだろう』と周りから言われる程のシスコンぶりを発揮する彼は、妹の真剣な思いに少しでも助けになれればと、密かにある計画を立てていた。


『成功すれば妹の喜ぶ顔が見れた上に、我が国も安寧を約束されたも同然……』


「魔人にくれてやるより、奴にくれてやる方が遥かにマシだ。大事な大事な妹なんだからな……」


『あの魔術師は一筋縄ではいかない男だ。伊達に長いこと生きていない……だから』


――念には念を入れなければ――


そう思いエステルはこの場に足を運んだのだ。

魔術師の事を調べる為に。

『青碧の魔術師』それは件の人物の詳細が、余りにも世間に知られていない、と言う事から単を発する。

この計画は、相手をよく知らなければきっと失敗に終わる。

だからエステルは、400年も昔の事が書いてある文献を閲覧しようと、世界一を誇るこの図書館にやって来たのだった。


――ロンディア王国王立図書館――


学問に力を入れている、イシスやエステルの愛する王国。

エステルにとって父の後を次、将来自分が治める国だ。

もし、イシスがシュリと結婚すれば、王国は青碧の魔術師と、姻戚関係を結べる事になる。

失われし魔道王国の技術。

その代表的な技術には、夜でも真昼の様に辺りを明るくする魔術や、馬がいなくても勝手に走る馬車が有ると言う。

実際には、それら以上の技術がザイラスには存在したが、こればかりはエステルのあずかり知らぬ事であった。


「史実の様な魔術を学ぶすべが、我が国にも欲しい……」


エステルは、根気よく持ち出し禁止の本の棚を探していった。

程無くして彼は、一冊の本を見つけ出した。

比較的新しい装丁の本で『ザイラスの魔術師、魔女一覧』と言う題名で、著者は『ヒューイ=ラング』とある。

パラパラとめくってみたが、そこには魔術師と魔女の名前に二つ名、そして王国に仕えた任期が記しているだけだった。


「やはり、見つける事は困難なのだろうか……」


< 56 / 130 >

この作品をシェア

pagetop