青碧の魔術師(黄昏の神々)
「どこ……って……そこはそれ、おいら見た通り猫…………だし? 」


『そこは、はてな……で終わらせる所か?』

その生き物は、見た目通り、猫以外の何者でも無かった。

ただし、人語を解し言葉を話しはするが。


飼い猫が少々興奮気味でまくし立てるのを、青年は聞いているのかいないのか、無表情で見つめてていた。


「もーっ!! シュリってば、猫の集会に決まってるじゃん!!  おいら、猫語もいけるくちだもん。猫の集会は万国共通!! しばらく滞在するなら、挨拶位、済ませておかないとね!!」


意気揚々と尻尾を振りながら、シュリと呼ばれた青年の腰掛ける窓際にやって来ると、猫は、通りをいちべつし、顔を上げて彼を見つめた。


「朝ご飯食べたら街に出ない? それとも、見た夢のせいで、そんな気にならないとか?」


気遣わしげに、ゆらゆらと、色違いの瞳が揺れる。

シュリは、溜め息をつくと、


「良いだろう……。お前は、はなっから、祭を見て行くつもりだったんだろう? どのみち二、三日は滞在するつもりだったからな……羽目、外させてやる。ただし……」



シュリは、そこで言葉を切って、飼い猫を青碧の宝玉の様な瞳で、見据えた。

猫はそんな主を見返して、にぱーっと笑うと、


「わーってるって!! ただの猫のフリしろってんでしょ」


猫は、床に向かってジャンブすると、おどけた仕草で尻尾を振って、


「にゃ〜ご〜」


と一声鳴いた。


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