青碧の魔術師(黄昏の神々)

思惑

お城の中で一番大きなホールは、招待客でひしめき合っていた。

客の到着を告げる使用人の途切れぬ声に、訪れる来客の多さを思い知る。

シャンデリアには蝋燭の明かりが灯り、テーブルには数多くのご馳走が、所狭しと列んでいた。

楽隊が、部屋の隅で踊りに相応しいテンポの楽を奏で始め、着飾った男女が手を取りあいホール中央に集まりだす。

シュリはそんな光景を何と無くだが見つめ、その後辺りに目を配った。

一つは、場内の観察の為。

もう一つは、人外の者が訪れていないか、監視する為。

こんな事になるとは考えていなかったので、十分な準備をしていない。

如何せん魔術の道具が少な過ぎて心もとない。


『あのふざけた親父に頼むのは嫌なんだが、そうも言ってられないか……』


そんな事を考えながら、シュリは回りの明るさに目をすがめた。

白い壁が、蝋燭の明かりを反射して、辺りを直一層明るく照らしている。

良く考えて造られているお城だった。

昼間は太陽の光をふんだんに取り込み、夜には少しの蝋燭の明かりで自らが輝く。

そんな城で壁の花よろしく立ちすくむシュリは、ホールの隅のテーブルの側にいた。

窓際に整然と列ぶ、テーブルの下には、ロイが潜んで料理に舌鼓を打っている。

テーブルの足元迄有る、テーブルクロスの御蔭で、ロイは難無く食事にありつけていた。


「はぐはぐ……」


ロイが、必死になって食べる音が聞こえる。

シュリは、ロイの隠れている方へ視線を落とし、クスッと笑った。


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