青碧の魔術師(黄昏の神々)
「元々あの化け物は、異界の住人でね、私の生まれ故郷と同じ世界の住人なんだ」

「魔術師様の世界……」


感慨深げに呟くイシスの思考を、横から無理矢理遮って、漣が何かを思い出したのか、素っ頓狂な声を上げた。


「あっ! 私の事は『義父様』か『漣ちゃん』って呼んで欲しいなっ」

「えっ? で、でも……」


シュリが聞いていたら、間違いなくげんこつが飛んで来ただろう。

一見、ふざけた態度にしか見えない漣の申し出に、イシスは困惑し、戸惑いの声を上げた。


だが、漣の言い分はこうだった。


「だって、イシスちゃん、シュリの嫁さんになるんでしょう。なら私は、イシスちゃんのお父さんにもなる訳だし……それとも、シュリもトレントと大差ないから嫌かい?」

「えっ……? それは一体どういう事……」


『ですか?』と言いかけて、漣が「しっ」と、人差し指を自身の唇に当てて、『静かに』のポーズをとって見せた。


「見てて……。そうしたら、私の言う『意味』が解る。ほら……戦いが始まるよ。旧支配者……邪な神々の戦いが……」


漣が指差す方角には、イシスが愛してやまない男シュリが、対峙する男の腕から放たれる、触手の攻撃を弾き返していた。


< 95 / 130 >

この作品をシェア

pagetop