恋、来い、請い
「引っ越すとか聞いてないんだけど」
《いや、ちーじゃない奴にも誰にも言ってないから》
呆れながら一葉は笑う

こんな時ですら一葉の声が聞けて嬉しいなんて

軽く不謹慎。。

「……どこに引っ越すの?」
《あー…学区内……なんだけどさ》

じゃあ転校する必要ないじゃん。
「ふうん?そうなの?」そう思ったけど
無駄に詮索するのもよくないなぁ……と自分にブレーキをかけた。

《………親にさ、ちーと同じ学校に行かせないって言われた》

あぁそうか

私が余計なことを言ったからかな



それでも

「一葉、引っ越す前にお別れ会しよう」




せめてあと一回


会いたい



《いいよ》


聞こえるかどうかもわからなくなりそうな
小さな声で

そう言ったのが
聞こえた


《会えるの、最後になるかもしれないし…》
「最後ねぇ…」

あえて口に出すと本当に“さよなら”

なんだなぁと思った。

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