恋、来い、請い

「ん?」
声からして、呼び方からして
一葉だと確信していたから
わざとらしくのほほんとした感じで答えた。

「さっきからじろじろ見んな!!」
「じろじろじゃなくてちろちろ見てたけど?」
「・・・・・・・・・・・・ッくそっ」

零久斗が視界に入ると同時に
あの作戦を思い出した。
もうあんなのどうでもよくなってたけど
零久斗の眼が期待しているのが一目で分かった。

「・・・可愛いね、一葉」
小さく笑って彼女(?)の耳元で甘くささやく。
耳に吐息がかかったのか
一葉の体がビクッって反応した。




「―――――――ここ弱いんだ?」



「っうっさい!!ちょっと来い!!」
見た目とは裏腹に力強く僕の腕を引く。





「何処行くの?」
「ここ。」

は?

「なんなの?」
「べっつに」


「成績下がるから戻りたいんだけど」
「どうせいい成績だから下がったくらいが丁度いいぞ」






なんなんだ。
さっきのことで怒ってるのかな?
でもあれはいつものことで・・・






< 28 / 197 >

この作品をシェア

pagetop