恋、来い、請い
「ん?」
声からして、呼び方からして
一葉だと確信していたから
わざとらしくのほほんとした感じで答えた。
「さっきからじろじろ見んな!!」
「じろじろじゃなくてちろちろ見てたけど?」
「・・・・・・・・・・・・ッくそっ」
零久斗が視界に入ると同時に
あの作戦を思い出した。
もうあんなのどうでもよくなってたけど
零久斗の眼が期待しているのが一目で分かった。
「・・・可愛いね、一葉」
小さく笑って彼女(?)の耳元で甘くささやく。
耳に吐息がかかったのか
一葉の体がビクッって反応した。
「―――――――ここ弱いんだ?」
「っうっさい!!ちょっと来い!!」
見た目とは裏腹に力強く僕の腕を引く。
「何処行くの?」
「ここ。」
は?
「なんなの?」
「べっつに」
「成績下がるから戻りたいんだけど」
「どうせいい成績だから下がったくらいが丁度いいぞ」
なんなんだ。
さっきのことで怒ってるのかな?
でもあれはいつものことで・・・