好きだから、別れよう。
10分ほど車で走ると、マサキさんが「もうすぐだよ」と私の手を握った。
「ここまでの道、わかった?」
ゆっくりとハンドルを切るマサキさんを横目に見ながら、私は正直に答えた。
「じ、実は…初めはわかったんだけど、途中から…」
「あははは。じゃあ今度はアヤの家から俺んちまで歩いてみるか!それならわかるだろ?」
マサキさんはギアをRに入れて、ゆっくりと車をバックさせた。
「駐車しちゃうから、ちょっと待ってて。ちなみに、後ろにあるのが、俺の住んでるアパートね」
「えっ!!」
振り返ると、水色の外壁の、2階建てのアパートがそこにはあった。
白い縁取りの出窓がかわいいアパート。
「どれ?どれがマサキさんのお部屋?」
興奮ぎみな私とは対称的に、マサキさんははにかんだ表情でギアをPに入れる。
「2階の、南側の部屋。ほら、洗濯物干してあるとこ」
マサキさんが指差す先を見ると、
いかにも『男の人の独り暮らし』といった感じの洗濯物が、ゆらゆらと風になびいていた。
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