好きだから、別れよう。


この間のように、私が一般車両に乗れば、話せる。


周りに人がいっぱいいるだろうけど…。


でも、それだとマサキさんとした『約束』を破ることになる。





『約束』……





右手の小指を見つめながら思い出してニヤける私。



「ちょっと、アヤ!真面目に考えてよね〜!」


リカコの声で、現実に引き戻される。


「あ、ごめんごめん…思い出してドキドキしちゃってた」




…そう、本当にドキドキするんだ。


マサキさんの真剣な横顔。

吊り革から放たれた右手で、立てた小指。


優しく微笑む姿。



声を聞けたのは昨日だけだけど、ちゃんと耳に残ってるよ。


「どうしました?」「大丈夫?」「ホラ…約束。」



私の頭の中にちゃんと録音されてて、何度も何度も再生してるんだ。






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