好きだから、別れよう。



マサキさんはいつものように、

空いている車内でも座ることなく、右手で吊り革を掴みながら暗くなった窓の外を見ていた。



真っ直ぐな目。

ポケットに入れられたままの左手。

小脇にバッグを抱えてる。



あのバッグ、いいなぁ…。
私もマサキさんの腕に、抱きしめられたい。




ドキドキ、する。

マサキさんがここにいるだけで、この車内がいつもとは全然違う空間に見えるんだ…。

私、本当に、

この人に恋してる。





私は、鞄の中からさっき書いたアドレスの紙を取り出して、制服のポケットに入れた。



リカコ、また作戦変更だよ。

明日の朝渡すつもりだったけど、

リカコの「頑張れ!」パワーをもらった今、

私は…頑張る。





一歩ずつ、マサキさんに近づく。


ドキドキ…


なんだか緊張しすぎて、真っ直ぐ歩けないよ…。





ゆっくりゆっくり近付き、あと5mくらいのところで、

マサキさんがこちらに目を向けた。






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