好きだから、別れよう。



「あ…あの…こんばんは!」


マサキさんは私をじっと見て、「こんばんは」と言いかけたところで、少し険しい表情になった。



「…これは?」



マサキさんは右手の小指を立てて、私に見せる。



「ちゃんと守ってますよ、『約束』!でも、この時間の電車は女性専用車両がないから…」



私も右手の小指を立てた。マサキさんは、そっか、と言って再び吊り革を掴んだ。



どうしよう…

どうやって渡そうかな…?

ヤバイ、すごく緊張するよ…!



冷房が効いている車内で、私は汗が出るくらい緊張していた。


そんな私に、マサキさんは優しく声をかける。



「…ん?どした?大丈夫?」



マサキさんは、いつも私の変化に気付いてくれる。


痴漢されてたときもそうだし、今も。


私が顔に出やすいだけかもしれないけど、そこにサッと気付いて、優しく声をかけてくれる…



そういうとこ、すごく好き。






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