好きだから、別れよう。
「あ…だ…大丈夫です!なんか夜になっても暑いですね〜!」
私は鞄からキティちゃんの団扇を取り出して、パタパタと扇いだ。
すると、マサキさんの手が伸びてきて、
「貸して」
私の右手から…団扇を奪った。
手…
今、手が触れた…。
マサキさんの、大きな手。
…しかも、私のキティちゃんの団扇、マサキさんが使ってるよ…。
あの団扇、一生の宝物にする…!!
なんだか、夢のようだった。
いつもは朝…しかも隣の車両から見ることしかできなかった大好きな彼が、
今、私の隣にいる。
私の団扇、使ってるよ。
ホント、夢みたいだよ…。
「…ご乗車ありがとうございます。次は〜〇〇駅〜〇〇駅に到着です」
そんな幸せな時間にピリオドを打つアナウンスが流れた。
私の降りる駅に間もなく到着。
あ…どうしよう。
早く渡さなきゃ。アドレス。
チャンスは今しかない…!!
「…あの…マサキさん!!」
意を決して、私は叫ぶようにマサキさんを呼んだ。
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