好きだから、別れよう。


驚いた表情で、マサキさんが私を見る。



「あの…あの……これ…お願いします!!」



私は制服のポケットからアドレスの書いてある紙を取り出して、マサキさんに差し出した。


スカートのポケットに入れておいたせいで、紙は少し折れ曲がっていた。



「これは…?」



「あ…あの…私が降りた後で見てください!し、失礼します!」



マサキさんに一礼して、ちょうど駅のホームにたどり着いた電車から、逃げるように走って降りた。



恥ずかしくて、今日は見送ることができなかった。





渡した…!

ちゃんと渡したよ、リカコ!!

メール、来るかな…?

今日はもう遅いから、明日かな?





私は、マサキさんに貸したままの団扇のことなどすっかり忘れて、熱くなった顔を両手で押さえながら、家路を急いだ。








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