好きだから、別れよう。



駅に着き、いつものように改札を抜ける。


電車が来る方向を眺めていると、遠くから青い電車がだんだんと近付いてきた。


私の心臓も、電車が近付く音と比例して、だんだんと高鳴っていく。





…怖い。

マサキさんの顔を見るのが、怖いよ。





本当は、最前列の一般車両とかに乗れば楽なのかもしれない。


自分からマサキさんを避ければいい。



でも…



私はマサキさんと約束した。


最後尾の女性専用車両に乗るって。


『約束』したから…。





――7時32分。


私は左手で、右手の小指をそっと撫でて、女性専用車両に乗り込んだ。



いつもの席…

ガラス越しに隣の車両が見える、いつもの席に腰掛けた。




緊張で震える手を押さえながら、


意を決して、私は隣の車両に目を向けた。








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