好きだから、別れよう。



それまでは、隣の車両から、わりと整った彼の横顔をただ見てるだけだった。

でも、彼の優しさを知ってから、私はどんどん彼のことを好きになっていった。


吊り革を握る右手。

少し苦しそうにネクタイを緩める仕草。

ポケットに入れられたままの、見えない左手。



もっと見たいな。

もっと知りたい。

名前も仕事もなんにも知らないのに、

こんなに、こんなに大好きなんだ。







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