好きだから、別れよう。
駅に電車が着いた。
彼女の降りる駅。
彼女は俯きながら、なにやらスカートのポケットをゴソゴソしている。
「あ…あの、これ…お願いします!」
ポケットから、小さく折り畳まれた紙を差し出してきた。
「…これは?」
「私が降りたあとに見てください!しっ、失礼します!」
彼女が走り去ったあと、逸る気持ちを抑えながら、ゆっくり紙を開いた。
紙の中には、綺麗な字で、彼女の名前とメールアドレス。
『櫻井アヤ』
アヤちゃん、かぁ。
本当は、今すぐメールしたかった。
でも、電車の中だし。
なにより、いい年こいた大人が、女子高生にすぐメールするのも…軽く見られたら嫌だから、やめた。
明日、出張に行く前にメールしよう。
…そう思っていたのに。
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